こちらのブログに書くのも、実に3年振りです。
先日、村上春樹の6年振りという短編集、『一人称単数』を読みましたので、感想をば。
正直そんなに熱心な読者ではないですが、長編が出る度に、ベストセラーとなるので、一応どれどれと読んでました。
今回の作品は、6年振りで、2018年から2020年にかけて「文學界」の連載された7作品と、書下ろしの表題作「一人称単数」の全8作。短編なんで、わたくし的に読みやすかったです。
つきあったガールフレンドとの思い出に絡むあれこれ、音楽がらみのファンタジーなど「らしい」作品に混じって、「謝肉祭(Carnaval)」と、「品川猿の告白」が、ちょっと気になりました。
「謝肉祭(Carnaval)」の方は、「醜い」という言葉が連呼されています。
象徴的ではなく、どうやら物理的というか、主人公の好みを端的に表現しているようなんですが、美しいものばかりに囲まれる感の、いつもの著者の作品とは、ちょっと毛色がかわっています。
「品川猿の告白」の鵬は、群馬の(とここは明示w)の貧相な宿に泊まって、猿と話すというファンタジーなんですが、場面設定が、これまた、いつもの、こじゃれた風と違っていて、逆に興味深く読みました。ただ品川としたのが、少し惜しい。
小説家は、〇〇小説家と規定されるのを嫌うというのを、ある著名な作家の方のお話で、聞いたことがあるのですが、70歳を過ぎて、(ちょっとだけでも)村上らしくない、を発表されるのはむしろ、面白いと思うのですが。
『一人称単数』収録作:
「石のまくらに」
「クリーム」
「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」
「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」
「『ヤクルト・スワローズ詩集』」
「謝肉祭(Carnaval)」
「品川猿の告白」
「一人称単数」(書下ろし)