「人事も経理も総務も中国へ」

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9月3日、NHKスペシャル「人事も経理も中国へ」が放送された。タイトルでは、人事と経理だけだったが、中心の話は、最もアウトソーシングになじまないと思われる総務の仕事を、中国にアウトソーシングする、某大手通販会社の話である。

たぶん、そんなに演出はないだろう。アウトソーシングの社命に抵抗するベテラン総務社員の動揺から、吹っ切るまでの様子を生々しく、会議の中まで入って描いている。これが全部演出だとすれば、相当な演技力だ。

自分たちにしかできない、少なくとも日本人にしか、社員にしかできないと思ったことが、中国人にいともたやすく(というか優秀な人達によって)、マニュアル化され、こなされていく。いまや大手企業の中には、生産現場だけでなく、人事、経理、そして総務の30%くらいまで、日本語に堪能な大連の会社によってアウトソーシングされるという。結果として何人かの日本人は職を失う。(番組の中での会社は、それによって解雇は無いとなっているが)

それにしても、自分が新入社員だった大昔、コンピュータ導入のお先棒をかつぐ役割となって、よく考えたものだ。「工場は自動化を進めて、別会社化への道を進む。事務系統もこのままだと、コンピュータ化や、人件費抑制のために、人が減らされる。営業は代理店に任せることが可能。そうなると、結局、最後に残る『会社』の実態というか主体は何なんだ?」
オーナー会社でも、公開会社でもない、その会社での「会社の主」って、誰なの、と。

昔は、コンピュータによって仕事を奪われるという脅迫観念があったが、それほど事態は深刻にならなかった。コンピュータによって、むしろ余計な紙や資料がやたらと増え、「仕事の整理、マニュアル化」はさほど実現しなかったからだ。その後、経営上の理由によって、事務処理スピードをストップウォッチで計るという、荒唐無稽なコンサルタントが導入されたらしいが、成功したのかは知らない。それよりは、むしろ中国へのアウトソーシングの方が、まだ成功するだろう。費用対効果という意味では。しかし、結局は人件費抑制と、職場の喪失がその後に来る。

みんながみんな、経営者や自由業に向いているわけではない。採用時の職種とその後の職種が大幅に変わるのは、契約の観点からどうなのか。日本では、採用を契約とは見なさない、不幸な慣習がはびこっている。それでも終身雇用ならまだいいが、そんな会社も希少になっている。コストも重要だが、人と人をつなぐ部分まで、アウトソーシングして、その会社の本体って何、何を売っているのと、と問いたくなるが。。。それほどにコスト競争が厳しいということなのだろう。