NHKの殻を破る刑事ドラマ「リミット 刑事の現場2」が面白い

最近、面白いドラマに飢えていたところ、土曜9時からのNHK総合の刑事ドラマ「リミット 刑事の現場2」にはまっています。

刑事の現場からリアルなドラマということで、NHK名古屋放送局が制作している刑事シリーズの第2作。
第1シリーズは見ていませんが、寺尾聡扮する団塊ベテラン刑事と新米森山未來刑事による、「技術の伝承」とか「世代間のズレ」のような話だったのでしょうか?

さて、今回のシリーズは、『ハード・ボイルド』。武田鉄矢(梅木刑事)が、世の中の悪い物を全部貯めてるような表情を緩めることなく、快演。犯罪者を、意識が落ちるまで、文字通り締め上げ、時に罠に嵌め、真の意味で、危ないデカを演じています。

絶対近寄りたくない、女性なら絶対抱かれたくないと言わせるような雰囲気。トラブルメーカーで、署内の鼻つまみ者。そこに、第1シリーズと同じ森山未來扮する3年目の若い刑事が、「常識派」として登場してきます。

毎回、ベテランの梅木刑事は、犯罪すれすれの手荒い方法で、犯罪者を追い込むのですが、その底にあるのが、婚約者を殺した犯人を自分の手で殺したいという、とんでもない動機。その暴力的な手法、セリフは、「天地人」のような、他のNHKの予定調和なドラマとは一線を画す、冒険的な試みです。

真実を描くには、表面的な描写だけでは届かないところに、現実があることを意識しないといけない。スターを見せるのではなく、社会を見せようとするには、どうしたらいいのか。オブラートで真実をぼかすのではなく、リアルに刑事の現場を見せようとすれば、一歩踏み出すのもありでしょう。それを民放ではなく、NHKがやってみせたというのが、面白い。

さて、犯罪被害者(加藤あい)と、どうやら、愛情というより「同情」で結ばれた、いかにも若い加藤刑事(森山)は、当然梅木のやり方、考え方に反発するのですが、荒っぽいながらも的確に犯罪者を追い詰める梅木のやり方や、恋人との関係を見抜ぬいた残酷な言葉に、だんだん何が正義か、何のために誰のために刑事をやっているのか、わからなくなってきます。

全部で5回放送のうち既に3回を終了。いよいよ梅木刑事は、憎っくき仇の出所を前に、刑務所へ復讐へと向かうようですが・・・

遊川和彦の脚本が素晴らしい。エイリアンみたいな目をした細身の森山の演技もいいし、最初はさえないオールド・ミス風から一転、際どいセリフを連発するいい女風になる若村麻由美もいいのですが、何よりも、この作品、間違いなく、武田鉄矢の代表作になりましたね。