「人もボールも動かす」サッカー

EURO2008が終わりました。録画忘れもあったりして、ぽつぽつとしか見れませんでしたが、まだまだ日本のサッカーとは根底から違うなあと、思わざるを得ませんでした。

技術では世界に通用する選手もぼつぼつ出ている日本ですが、世界では、「上手い」のは当たり前で、それにスピード、強さ、スタミナがないと、対等にわたり合うには厳しいですね。全盛期の久保竜の身体能力に、俊輔のテク、松井のドリブル、玉田のスピードを合わせ持つようでないと(人選に異議あり?はひとまず却下)

さて、読んだ方も多いと思いますが、杉山さんの「4-2-3-1」を読んでからユーロを見たので、非常に参考になりました。確かに、オランダ、ドイツ、イタリアなどが採用していたかと思います。4列表記なのも、そうなのかなと。サイドからスピードに乗って攻めて行くには、確かにトレンドなのでしょう。日本代表でもやったりしてますが。。。
しかし、優勝したのは4-4-2や4-1-4-1で、「ファンタジスタ(死語?)」と「スピードスター」ばかりのスペイン。あれだけ個人の力が卓越して、連動ががっちりできていると、それを生かす布陣の方が「トレンド」より強いということでしょうか。

そもそも「誰が」「どんな選手」がサッカーをやるかが初めにあって、布陣はそれを活かすためのものに過ぎないと思います。個々の選手・チームの力量が、高いレベルで拮抗してきているヨーロッパでは、あるいは、相手との相互関係で、布陣が大きなウエートを占めるのかもしれませんが、日本は、例えばトラップ技術、ボールキープの仕方ひとつとっても、まだまだな段階です。
190cmの選手でもスピードがあってサイドバックをし、それに対して170cmの選手がボールをキープできるような地域です。ヨーロッパやスペインから学ぶことは多くても、形だけ真似ても、すぐに同じサッカーはできないでしょう。

それと、まだ、ヨーロッパとは異なるスポーツをやっているような気がしました。それは、ジャッジの問題。というか、プロサッカーの歴史の違いかもしれません。日本の審判がいいとか悪いとかではなく、審判に対する要求が違っているのです。アマチュアとか「体育」の延長線上にプロがあると思っているように見える日本と、鍛えられた肉体を持つ選手だけが出る場がプロという、あちら。極端に喩えると、日本はアマチュア・レスリングの基準で、プロレスを裁く感じではないですか。ユーロの審判もミスはあります。技術的には遜色ないかもしれません。しかし思想が違うのです。

少々のコンタクトでは笛は吹かないし、アドバンテージを良く取って、ゲームを簡単には止めません。混乱の元となる、判定で迷う様子は見せません(たとえ見間違いがあっても)。もちろん、年代によっては、世界ユースなど、日本に近い「教育的笛」が吹かれているようですが、トップ・プロの大会は明らかに別物です。ルール自体は同じでも、日本でのプロリーグのルールの適用・運用は、世界とは異なる思想で貫かれているように思えてなりません。

個々の選手の視野の広さ、高い技術とスピードに加え、それを妨げないレフェリング。布陣の研究も世界と戦うための大事な要素だと思いますが、まず日本で行われているプロのサッカーのルールの「基準」を見直してほしいと思います。日常のゲームの土俵が違うのに、世界への対抗策を付け焼刃で練習しても、効果が薄いと思います。

それにしても、スペインのサッカーは美しく、そして強いサッカーでした。小柄な選手たちでも互角に戦うところが見れたのは爽快でした。あそこまでいかなくても、1対1で強くなった上で、連動して勝っていくサッカーを見たいですね。日本でも、ベガルタでも。。。