勝ち点3を取るサッカーを

 2005年J2最終節対福岡戦。勝てば3位決定、入れ替え戦に進む。引分け、負けでも甲府が勝った場 合のみ逆転される。甲府の相手はぶっちぎり優勝を決めている京都。よもや京都が甲府に負けることはないと、正直私はタカをくくっていた。甘かった。運に頼る、恥ずかしいことだ。
 でも、選手や、福岡までかけつけた、あるいは仙台スタジアムの寒風の中で応援していた人は、勝つことしか考えていなかったと思う。本当にお疲れ様でした。

 悲しかったのは、最悪の事態も想定すべき、ベンチまでもがそう思っていたことだ。結果を確定させるべき勝ち点3を狙わずに、相手次第の選手交代で迷い、手遅れになった。手を尽くして敗れたなら、別な思いもあっただろう。だが、ベガルタのベンチに、本当の勝負師はいなかった。
そして、思えば、この試合だけじゃない、これが今年のベガルタのサッカーなのだな、引き分ければいい、のサッカーだったのだなと思った。これを何年継続しても昇格は不可能だと思う。

長いリーグ戦でとりあえず、引分け狙い、というのはJ2安住のサッカー。確かに引き分けて、時々勝てば、○戦負けなし、とかマスコミが提灯をたれ下げてくれる。なにか強くなったような錯覚を、自分もサポーターも選手も持ってしまう。引分け3つは、1勝2敗と同じでしかないことをすっかり忘れている。しかし、それでは、中位から上位争いまでは行けても、その上は狙えない。勝負どころで、ビハインドの状況で、勝ち切るメンタリティーや体力、攻撃パターンを持たないチームに、昇格はありえない。ストライカーを生かす様々形がなければ、点取屋がいても孤立するだけである。

 守備を鍛えるというのは、ある意味当たり前で、そのあと、どうやって点を取り、相手を上回るか、までトータルに計算されていなければならない。得点力のある個人の力だけで、勝利しているかに見えるチームも、実はそこまでの過程が、きちんとできていることは、私なんかより、サッカーの詳しい方のほうが良く知っているだろう。

 本気で昇格を狙うなら、どんな状況でも、勝ち点3を狙うサッカーが必要だ。そのためには、ゆったり守備ではなく、激しいプレス、相手を凌駕する運動量、正確で強いパスワーク、そして何より強いメンタリティーが必要。そんなことはプロなら分かっている?なら、どうしてその準備をしてくれないのだろう。それらを可能にするすべての基本は、フィジカルではないのですか?
厳しい練習の裏づけなくして、本当の精神力なぞ生まれてこない。試合の時だけ、怒鳴り散らすだけでは、その場しのぎ。すぐに慣れっこになる。そして今年の場合、何が原因かは分からないが、練習試合もしない。相手の癖が分かりきった同士でのプレーで、出場選手を決めている。若い選手の経験値は上がらず、闘争心も、チームとして絶対勝つ、という気概も小さいものになってしまうのではないか。

 誰が監督がするかが話題になるが、本当は、どういうサッカーがされるかが重要なのである。また、そのサッカーを実現するために、監督は、何を、どう、日頃やっていたのか、そこをしっかり見極めて欲しい。選手に「きつ過ぎる」と言われるならともかく、練習が足りない言われるのはどうなのか。時間にルーズなのはどうなのか。自主練だけでチーム戦術は浸透するのか。昇格に向けての戦い、そして育成の仕方という意味でも、今年のやり方を、そまま続けるのであれば、チームにとってマイナスであると思う。ただ継続すればいい、というものではない。中味が来年以降のベガルタに必要なものかどうか、である。

 勿論、現監督がまったく努力しなかったとか、能力がないと言うつもりはない。顔色が変わるほど苦労し、勝ちたいとも思っていたと思う。しかし、そのやり方は、今のベガルタが必要としているものとは違うと思う。ベガルタは、完成された選手が集まった、完成されたチームではない。ベガルタに必要なのは、個人の力をアップさせ、組織力を加えて昇格を果たし、その後もJ1のチームと対抗できる力強いチームにつなげられる指導者である。

 負けても楽しいサッカーが見られればいいという人もいる。そういう楽しみ方もあるだろう。しかし、私は選手が形でだけでなく、現実的に、上を目指し奮闘する様を見たい。どんな時でも勝負にこだわる姿勢を監督も、選手も、サポーターも、持ち続けなければ、強いチームはいつまでもできず、チャンスを見逃しては、低い目標に安住する、ただの仲良しクラブになってしまうと思う。
負けが多くなれば、チームは、いずれ、どんどんスタートラインを下げることを強いられる。サッカー資本主義は冷徹で、強いチームに強い選手、若手が集まり、育成もうまく行く。そうでないチームは、じり貧が続く。だから、どこかで、厳しい監督の下でチームを鍛え上げ、比較的短期で勝負し、上に上がり、いい選手が集まる状況に持っていかないといけない。そういうサッカー、指導をする監督が何より必要であると思う。

 J1でプレーする、あるいはその先を夢見る選手達を、厳しく鍛え上げ、力をつけさせ、引き出し、勝負する監督、勝利で成功体験を積ませ、当面の目標を果たすチームを見たい。
それを実践できる新しいやり方、監督を希望する。