(追記)上記エントリーを書いたあと、パトリック・インバート監督のインタビュー記事を見つけました。
やはり、フランスの制作システムが、なせるわざという面もあるようですね。
マーケティングに基づく商業的なアニメも業界的には必要ですが、アートに寄せた作品も、発表できる環境が日本にもできますように。
宣伝コピーでは、「天才野球少女」の話としていますが、あえてヒロインのチュ・スイン役に、華奢な感じのするイ・ジュヨン(「梨泰院クラス」=見てないヨw)をもってきて、まさに血の滲むような努力を重ねる、アスリートとして描き、市井の人が、夢に向かって突き進む様を強調しています。
もちろん、130kmの球を投げる投手、チュ・スインは、「女子の中では」傑出しています。しかし、プロ野球では、凡庸という並み以下。
しかも、一球も投げない内に、「女子」ということで門前払い。
超えられないフィジカル、選手としての短所があるなら、どうすればいいのか。差別の壁はどう打ち破るのか。
一見、この、男女差別の壁が、メインテーマのように見えるかもしれません。もちろん、その壁は厚く、母親にも「高校出たらどうするんだ」「諦めることは恥ではない」と、強く諭されます。
それでも、違うスポーツへの道を紹介されても、チュ・スインは絶対にあきらめません。
そして、最初は「力の差があり過ぎる」と反対していたが、彼女のがんばりを見て、個人指導を引き受けた、高校野球部のコーチの努力で、トライアウトまでは、こぎつけます。
トライアウトの前にコーチは、母親に聞かれます。
「トライアウトなどさせて、娘に可能性があるのでしょうか?希望を持たせて、結局、失望させるだけでは?」
コーチは言います。「可能性は低いです。」母親、絶句。
「男子だってプロになれるのは少ない。可能性は低い。」「けれども・・・・」
この後のセリフが秀逸。
どう言って、プロ入り目指すことに反対していた母親を、説得したのかは、作品を見てください。
また、リトルリーグから、チュ・スインと一緒のチームの男子で、高校でも同じ野球部の同級生、イ・ジョンホは、めでたくプロから指名を受けています。
チュ・スインがトライアウトに行けるとなった時、このイ・ジョンホは、チュ・スインに、あるプレゼントを渡します。
まあ、邦画的展開なら、ここでコクったりするのか?ヒロインもかわいいし、などど、下衆な思いで見ていると、まったく違いました。
男女を超えて、同じアスリートとしての言葉、プレゼント。エール。これは変化球。やられた。泣ける。
この他にも、強い意志と才能を持ち、努力も怠らないヒロインだけでなく、周囲の「普通の人」にも目配りした、脚本が素晴らしい。
母親が、ただ金のために、娘に野球を諦めさせて、仕事につかせようとしていのか?資格試験に落ち続けた一見「無能」、やさしいだけの父の唯一の長所は?
プロには及ばない凡庸な選手だったコーチの取柄というか才能。
「ふつうの人」だって、夢に向かえる何かがある、という事を、小さなエピソードを積み重ね、伝えてくれます。
無駄を省いた、シンプルなセリフの中に、人生を織り込んだ、脚本・監督のチェ・ユンテ監督も素晴らしい。
超能力も、タイムトラベルも無く、ありえない幸運が舞い込むわけでもない。現実直視の直球の内容ですが、夢を諦めず、努力を積み重ねる"アスリート"の様と、周囲の人達の心情の変化も良く描けてて、じわじわと感動を呼ぶ素晴らしい作品です。
是非見てください。元気が出る。超おすすめです。
と、ここまで推しておきながら、仙台ではわずか2週間で上映終了。おい!
しかし、動画配信などで、必ずや、じわじわ人気が出るものと思います。必見です。
ひとつだけ、わたしだけかもしれませんが、ちょっとBGMの部分がそぐわないところが、何か所あって、単に音量のバランスだけかもしれませんが、「もう少し静かに見せてよ」と。
ただし、エンディングの宇多田ヒカルさんは、さすがです。
ファンの方は、過去の作品を思い出しながら、音楽に浸ってください。
漏らさないように。
で、濃いいファンには叱られるのは承知で、日本で実写版『攻殻機動隊』を撮るとしたら、当方の推し配役は次のとおりで、行きたいと思います。
年齢や体格などは、ひとまず置いて、テイスト、テイストで。
番外として、
女性総理:夏目三久
芸者ロボット:中川翔子
いかがでしょう?
主人公達は、まず生き残ることを考える。すると、生き残るためには、人間を選別して、「戦力となる、利用できる仲間」とするか、足手まといとして突き放し、場合によっては殺すことを選択する。ゾンビと戦うだけでなく、つけこんで来る人間とも戦う必要がある。あるいは食料が無い時は・・・。
ゾンビに囲まれた世界では、友情、愛情だけでは生きては行けない。しかし、それがなければ孤独がやってくる。かと言って人間愛を求めると、それを逆手にとった裏切りや、エゴにより、窮地に追いやられる。何が善で何が悪かも、相対化される。
人間って何だ。何のために生きているんだ。人生の意味は。答えは一つではなく、同じ人間にとっても、いつも同じとは限らない。
極限状態を設定することで、日常隠れている、正義感、倫理感、リーダー、エゴ、親子、夫婦、愛情の危うさ、欺瞞を、これでもかと突き付け、視聴者に、正解を示すのではなく、本質とは何か、問題を立てよと、迫ってくるのです。
多くのドラマでは、作者の意図が分かるように、あるいは納得できるように作られ、見る側もそれを感得したり、解釈したり、謎解きしたりして楽しむのですが、このドラマはストーリー的には、それなりのエンディング、あと味悪くても決着を見せますが、それは通過点であって、答えはないです。
勿論、作品的にオチは、いずれつけるのでしょうが、アメリカで高い視聴率を誇っているのは、この「自分で問題を設定せよ」、としている部分だと、私は思うのです。
その表れかどうか、主人公の周囲のメインキャラクターが、次々死んで、あるいはゾンビになってしまう。また、おとなしい主婦が、どんな「仲間」であろうと、その殺人も厭わない冷徹な兵士となり、暴力的な、ならずだった者が実はやさしさを見せ、そのために窮地に陥る。
さすがに主人公は消せませんが(たぶん)、予定調和を、極力排しています。
思うに、およそ人間に関することは、1か0かで、分別できる事の方が少なく、その間に無限のバリエーションがあると思われます。しかし、それらをひとつひとつ検討していては、脳が持たない。そこで、型に嵌め、少ない数に分類する。
ただ、もし、普段、無視し、捨て去ってる事の中に、重要な本質の何かがあるとしたら?
与えられた解法の答えを探るのではなく、問題設定自体を自分で作らないと、見えてこない。
その言いよう無い不安定感。緊張と弛緩の繰り返し。スプラッターの怖いもの見たさに加え、このドラマを長くても、面白くしている点だと思います。
さて、シーズン5では、新しい視聴者のためか、キャラクター紹介のような回が多かったですが、シーズン6になって、再びゾンビは喰いちぎり、迫ってくるし、人間の弱さ、正義にかこつけたエゴの剥き出しなど、状況設定もえぐぐ、パワーアップしています。後半話も楽しみです。
⇒「ウォーキング・デッド シーズン6 」
さて、横道にそれましたが、生まれながらに(作品によっては幼少期に)脳核以外は、すべて義体というサイボーグになった草薙素子。単一の身体を持たない上に、ネットワーク上の情報、プログラムと融合して、なかなか分りずらい精神構造をしています。
その中で、人間とは何か、機械とはどこが違うのか、というテーマが出てくるのですが、これまでは人間とは何か、というときに、単一の身体と精神、その誕生から死までで、考えておけばよかったものを、生殖医学の進歩が、攻殻とは、また違った問いかけをする段階になってきました。
まずはiPS細胞。文系な私には、いまひとつ理解し切れていませんが、もともと受精卵から分化したものを、初期化して、望みの器官などに再分化させる、ということでしょうか?
これにより、これまでの身体、宿命とか、時の流れによる縛られた身体に、囚われなくても良くなる道筋が見えてきました。さらに、
「12年凍結した卵子で出産 がん克服の女性、高2当時に採取」 (日経2014年12月)
これは、病気により子供が持てなくならないように、健康な間に卵子を採取・凍結し治療して12年後に、配偶者の精子と体外受精し、母体に戻す、というものでしたが、驚きでした。原理的に、精子も卵子も10年、それ以上凍結保存しておいても、受精できるそうです。
現在は、倫理的に、カップル本人が生きている間に、自分たち自身が精子、卵子を使うことになっていますが、本人たちが死んだ後まで、長期保存して、「借腹」に生んでもらうと、その子供は、いわばタイム・スリップした、といえなくはないか。。。
「攻殻」の中で、素子は、全身義体といっても、結構擬人化(この言い方もおかしいですが)していて、少女義体のサイボーグ?とベットを共にしたり、「いろんな男とつきあってるらしいよ」とバトゥに嘆かれたり、義体といっても女性の部分はあるのか、という少年の問いかけに「試してみる?」などと、今なら規制されそうな誘惑をしています。
視聴者へのサービス、という面もあるでしょうが、やはり「人間」のかかわりの中では、身体は必要なんじゃないか、という根本は、外せないという描き方。
「脳」だけあれば、人間だというなら、身体無しでも、快楽刺激でも与えておけばいい、ということになるはず。
先鋭的なSFアニメでさえ、そこは踏みとどまっていたのに、医学の方は、もう受精の前から、タイムスリップできるようになってしまって、もし、これに記憶の要素が加われば、不老不死になれる?
身体と精神が別々の存在になっていても、人間足りうるのか?
さらに、「攻殻」でもたびたび出てきた、知覚や記憶の書き換えの問題。脳の機能アップのために外部装置とつながる、あるいはネットワークと直結というには、かなりありそうで怖いですが、そうなると、元の人格が、大きく変わってしまう可能性が高くなる。
今は、特殊な病気だけで起こることが、簡単に引き起こされるようになると、本来の人格って何?ゴーストは、ひとつじゃやない、となってきます。
・・・長くなって、訳分らなくなってきたので、今回はここまで。
それにしても、あのゴキちゃんが、44cmの大きなフィギュアで、売り出されるとは・・・
買わないけど、見てはみたいw
]]>津田大介著「ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す これからのソーシャルメディア航海術 (PHPビジネス新書)」を読みました。
ビジネス新書シリーズということで、かなりエグいタイトルがついていますが、内容とは必ずしも一致していません。
ネット・リテラシーやSNSの(技術ではなく方法論的)使い方、ビジネスへの応用と注意点など、ライター志望の方はもとより、企業の広報担当の方や、学校のインターネット利用教育(あるのかな?)を行うときの副読本などに向いていると思います。
ちなみに、この「興味深い」というフレーズは、信用できない記事に良く使われる逃げの表現で、避けるべきものとして、津田氏が上げているものです。
【目次】
プロローグ ツイッターで「人」を見抜く
第1章 [動かす]メディアはどこへ行く
第2章 [受ける]情報のチューニング
第3章 [発する]アウトプットの論点
第4章 [伝える]発信者として突き抜ける
第5章 [魅せる]メディア・アクティビストになる方法
第6章 [働く]あらためて仕事とは何かを考える
付録1 特別対談 アルゴリズムに支配されないために 川上量生×津田大介
付録2 特別解説 津田大介論、あるいはパーソナルメディアの誕生 島田裕巳
Kindle版もあります。「ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す これからのソーシャルメディア航海術 (PHPビジネス新書) 」
新作ARISEの第2弾が劇場公開になっている、攻殻機動隊シリーズですが、いつか見ようと思いつつ、中々見る機会の無かった、2012年のテレビシリーズ「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」全26話を、ドコモのdアニメで、一気に見ました。原作 は士郎正宗、監督は神山健治。
さて、2nd GIGは、アニメファンの方には説明不要の、10年前のTVアニメ作品ですが、まだ見ていない方のために、僭越ながら説明しますと、精神と肉体と電脳ネットワークという哲学的な題材と、キャラクター達のミリタリーアクション(警察の公安9課という設定ですが、ほとんど軍隊)が、「かっこいい」アニメです。
舞台は2030年の電脳社会の近未来日本。未来なのに、伝統的、機械的なガン・アクションと、電脳戦が混じっています。そして政治的陰謀。
とにかく大きな魅力は、なんといっても、「少佐」こと、隊長である草薙素子の義体が、セクシーなことwえ、違う?
生まれた時から、脳以外はサイボーグ化しているわけですが、美人でナイス・バディーで、服装はほとんど、レオタードにローライズのジーパンという、大サービス。おやじ目線をとことん楽しませてくれます。それに、命令口調の田中敦子さんの声がいいすね。当時40歳なのに実に若々しい声で、セクシー。
部下のバトゥーは、指揮官として尊敬する以上に、素子に、ほの字なわけですが、もし、義体が無く、意識だけが感じられるシリコン生命体でも恋愛感情は起きる、のか。
擬人化が得意な日本人ですが、擬人じゃなくて脳は人間そのの。。。。
読者に対するサービスというだけでなく、人間における肉体、擬似肉体の意味を考えさせられます。電脳社会の恋愛について、哲学的な思考が必要です。エロだけじゃないw
それと興味深いのは、社会派的シナリオでできていることです。2030年の日本が「大戦」の後、アジアの某国から大量の難民を受け入れ、それが国内の不満につながっているという設定。現在のEUのようです。
また、ひそかに新宿の大深度地下に原発があって、その除染技術を海外に売ってるとか、テロリストにプルトニウムを狙われるとか、さらには、日本発の女性首相が、親中派でクーデーターをかまされる、等々、何か予見しているようで不気味なほどです。
人間とは何か、個性とはどう定義されるのか、ネットワーク社会、人間のサイボーグ化というSF的題材に加え、近未来の「ありそうな」陰謀がからまって、大人なアニメシリーズとなっています。
今年の劇場アニメ「ARISE」では、原点回帰のつもりなんでしょうか、素子の過去とか9課部隊設立の状況を描いているのですが、どうも少女体型の義体とか、ざんぎり頭の髪型が、自分には、なじまないですね。もうストーリーなんて・・・ではないですが、大人の素子だせとw第1部は見て、映像はさすが、とは思いましたが。まだ第2部は見ていないのですが。
ともかく、「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」の方は、SFや社会派小説などが好きな方にもおすすめできるアニメですね。
今年が日活映画100周年ということで、動画配信のGyaOで、日活映画3本を2週間ずつ、計36本を10月まで無料配信するそうです。
戦争映画など社会派映画や、昭和30年代の石原裕次郎の青春物や、小林旭、宍戸錠、赤木圭一郎の無国籍アクションものなど、ファンにはたまらないラインナップとなっています。
配信予定は、こちらのページが分かりやすいです。
小柄ながら、圧倒的な技術で距離を稼ぎ、低い姿勢で、果敢に空中に飛び出していく様は、「空飛ぶ魔女」。キキもびっくりです。最早、来年のソチ五輪の金メダル候補として、世界中からマークされる存在です。
]]> 飛ぶ前の表情がいい。女サムライのオーラがあって、鋭い眼差しは戦う姿勢と妥協を許さない意気込みが現れています。北海道の上川町というジャンプどころで、(父上の指導で)小さいころから飛んできたそうです。北海道には、ジャンプ少年団という組織があちこちにあって、熱心な指導者による育成体制がありますね。
(追記)第8戦は父上の誕生日で、「特別な日で絶対勝ちたかった」とコメントしています。泣かせますねえ。
さらに、海外遠征を考えて、旭川のインターナショナルスクールに在学して、英語にも慣れておくという、準備の良さ。ワールドカップで世界中を転戦しても、ものおじせずにプレーできます。
一番驚いたのは、12月の国内合宿で、転倒ジャンプで脳震盪を起こしながら、1月の次のW杯では、すぐに優勝。恐怖心という単語が辞書にない「魔女」です。
加算ポイントがある、他の選手より低いスタート台からでも、最長不倒を出せる飛ぶ力は十分。あとは、着地のテレマークでポイントをさらに稼げるようになって、てっぺんを目指していただきたいものです。(第8戦ではテレマークも決めた!)
日本には、世界最強の女、レスリングの吉田選手もいますが、「世界一飛ぶ女」の称号も、日本の魔女いや、少女が手にする日もまもなくだと思います。
追伸:久方ぶりの更新。
レスポンシブWebデザインのテンプレートを使用したので、スマホでも同じアドレスでご覧いただけるようになりました。長い間多様なハードに対応したケータイ用のCGIを提供していただいた、太鉄さんには深く敬意を表したいと思います。