「ゲゲゲの女房」の生きる力

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もう出版されてから時間が経っていますが、NHKの朝ドラが終わって、しばらくしたところで、改めて原作の「ゲゲゲの女房」を読みました。

水木しげる先生の、凄まじいまでの漫画制作にかける情熱と、それを支えた妻、武良布枝さんの二人三脚が描かれています。

著者布枝さんは謙遜して、自分は見守っていただけだ、と書いていますが、米びつの底がみえるような生活を、何とか切り抜けた新婚の数年間は、今の人間には想像できないものであったでしょう。肝がすわっていなければ、そこで潰れている。

さらにドラマではなかったですが、極貧なのに、軍人恩給は全部親元に送っていたということです。その上、ちょっと原稿料が入ると、自分たち食料だけでなく、親が喜ぶものを送ったりする生活。

水木先生の創作パワーは、片腕を失ったものの、玉砕のラバウルの密林を生き抜いた頑健な肉体と、若くして聖書や哲学書に通じていた精神力なのでしょうが、そこに、大人しく見えるが、女性ながら肝が据わった著者が加わって、より強化されたものと思います。

人はパンのみにあらず。しかし、絶対にパンを逃さない生き抜く力、そして苦しい中にも息が抜けることが必要と教えられます。(食うや食わずのとき、二人で軍艦模型作りに熱中。不思議な夫婦です)

さて、ドラマの方の山本むつみ脚本には、原作にない少女漫画を書く女流漫画家の卵や、調子が良くて金に汚い、ねずみ男のような人物が創作されていますが、ドキュメンタリーではないので、少し漫画チックな彩りとして、良かったと思います。

何より、この本ではさらっと書かれたいた、「戦場で片腕となったが、復員するときに親を悲しませないように片腕の絵葉書を予め送っておいた」というエピソードを、ドラマでは重要な逸話として、しっかり活かしていました。

それにしても、あの水木先生が、飯のためとはいえ、少女漫画を書いていたとは驚きですが、ちゃんと研究していたのですね。実際は結婚前に書いていたと、長井勝一漫画美術館(ドラマでは村上弘明の役)のサイトスタッフの方のブログで教えられました。

また、水木さんのアシスタントに、格闘技の劇画風作品が多い池上遼一 や、シュールなつげ義春がいたというのも面白いですね。水木先生は、つげさんのことを、仙人のようで仕事熱心とはいえず、しかし「あの人と同じところにすわると仕事をする気が失せる。しかし絵はうまい」と評しています。

「来るべきときが来て」漫画賞を貰い、実写の「悪魔くん」、テレビアニメの「テレビくん」を家族で正座して見るくだりになると、ドラマを想い出して、また感動します。文章も歯切れが良くて読みやすい。
疲れている方にお薦めの本です。